中畑沢右俣~六百山~霞沢岳~八右衛門沢

 

2003/5/4

 

岩間  みー(記)

 

        

 

 

 

 

5月3日 晴れ のち にわか雨

今シーズンの雪山は、2月の連休の東沢遡行で生気を奪われ、その後はムチウチになるし、何もしないまま時間が過ぎた。仕事の休みも暦通りの3連休しかないので霞沢岳にいくことにした。

今日は上高地に入るだけ。ゆっくり起きて出発したら岡谷で渋滞。松本で「さかたのおやき」を買うため1時間並び、やっと上高地に着いたら、アイゼンを忘れた事に気が付いた。上高地ではアイゼンは売っていなかった。松本まで買いに戻ったら、上高地行き最終バスには間に合わない。やってしまった・・・。岩間が帰り途中の青年にアイゼンを売って欲しいと声をかけてくれ、一万5千円で売ってくれるというので喜んでアイゼンを売ってもらう。10年くらい前の私のアイゼンと違い、まだ爪も尖った縦走用の12本歯の最新のアイゼンで、翌日その効果を知ることとなった。あの時の青年よ!ありがとう。

これでバカな敗退から免れる事ができ、小梨平にテントを張ってから中畠沢の入り口を偵察にいく。

中畠沢の取付となる五千尺ホテル横の公衆トイレにいくと、ちょうど2人の男性が下りてきた。私達と全く同じコースを歩く予定で偵察に来たそうだ。他にも行くパーティーがいるなんて、意外とメジャーなコースなのかな?と思った。

 

5月4日 晴れ

今日は朝3時に起きるが、周囲のテントも既に明るい。

ヘッデンなしで歩ける明るさまで待ち、ハーネスを身につけ出発する。5分ほどで公衆トイレに着き、トイレの脇でアイゼンをつける。今年は残雪が多いため、出だしから雪渓歩きだ。少し歩くと、きのう偵察に来ていたパーティーに追いついた。

堰堤を越え、トレースのない雪渓をどんどん登っていくと稜線が近づいてきた。そのまま真っ直ぐ稜線に詰める傾斜が緩い右の雪渓。真ん中が、傾斜がきつい雪渓。一番左が岩のルンゼとなっていた。地図を見ても、どこを登ればいいのか判断できない。右の雪渓は稜線を出た後に岩峰を一つ越えないといけないので除外。岩間が、真ん中の雪渓と左の岩のルンゼを偵察に行っている間に、追いついてきたパーティーはそのまま一番右の雪渓を登っていった。

私達は真ん中の雪渓を登る事に決め、傾斜が強くなるのでストックからピッケルに持ち替える。あっさりと稜線にでると、その先は雪がなく夏道が出ていた。夏道は尾根の右をトラバースするように続いていたが、尾根にでると再び雪に覆われ、夏道はわからなくなった。忠実に尾根を登っていくと、突然、3級くらいの岩場になってしまった。

 この岩場を登るには、アイゼン手袋ではロープが欲しいが、ランニングもとれそうもないし、ロープを出すと時間も掛かる。右下のルンゼには雪の斜面が見えている。岩間が潅木を伝ってルンゼに下りて偵察にいく。どうやら上に抜けられそうだとの事で、私も潅木を伝ってルンゼに下りて雪の斜面を登る。この雪の斜面はどんどん傾斜を増し、クラストしてアイゼンが決まるので怖くはないが、シングルアックスで爪先立ちで登り続けるので、ふくらはぎが張ってくる。それでも終わりは見えず、潅木でセルフをとって小休止を入れ、再度、爪先立ちで登り続ける。やっと、ハイ松がちらほら出てきて、六百山は近い。やたら登って身動きできなくなっても困るので、偵察を怠らずに登っていく。

 六百山の山頂に出ると、唐突にジャンクションピークから往復した?1人のトレースがあった。稜線は風が少し強いが、日当たりがいいので雪が腐り始めていた。時々、落とし穴にはまりながらジャンクションピークに向かう。暫らくして六百山を振り返ると、岩場の取付で、先程のパーティーが溜まっているのが見えた。いくつかの小ピークを越えていくと、ジャンクションピークが近づいてきて、徳本峠をゾロゾロ歩いている人達が見えた。やっとジャンクションピークに着くが、霞沢岳はまだまだ先だ。ジャンクションピーク手前の八右衛門沢左沢は下るには厳しい傾斜であった。

ここからはトレースがしっかりあって、なだらかな稜線を歩いていくと霞沢岳となる。

 六百山の登りで疲れてしまったため、一般道の徳本峠から下る事を考えたが、徳本峠は登り返しもあるし距離も長い。ジャンクションピーク霞沢岳側の八右衛門沢右俣の傾斜はさほど強くないので、八右衛門沢を下降する事にした。私は念のために持ってきた小さいサブバイルも身につけて下り始める。山スキーヤーが滑った跡があるかと思っていたが、昨夕も雪が降ったようだしトレースは全くない。雪は少し腐り始めてきており、岩間はアイゼンダンゴにならないように、気をつけながら下っていくが、昨日譲ってもらった最新型のアイゼンをはいている私は全く雪がつかないので安心して下る事ができた。八右衛門沢の下りは、ピッケル1本で下りる事ができる傾斜であったが気は抜けない。傾斜が緩くなってくると、今度はデブリが出てきた。デブリはだんだん酷くなってきて雪渓を埋め尽くすようになり、休む事ができず、カッパを脱げずに熱地獄だ。ようやく高台に逃れ、カッパを脱いでオレンジジュースを一気飲みして、またデブリの中を下るが、いい気はしない。

デブリに覆われた地帯は雪渓の1/3を占めていた。デブリ地帯の下まで偵察に来たと思われるトレースがあった。1/3がデブリに覆われている状態であれば山スキーヤーも入るまい。雪が溶けた林道でアイゼンやハーネスを外し、だらだらとした林道を下ってバス通りに出た。

ふくらはぎはピクピクして痛いし、随分疲れてしまい、遊歩道を散策している人達にも追い越されてしまう。それでもバスターミナルの売店で地酒の試飲をし、更にヨレヨレになって歩いていくと、河童橋の前で、なんと連休の前半に遊びにいったカヨさんと会った。岳沢に入ると聞いていたが・・・。

 まだまだ、帰る事ができる時間であったが、バス待ちと帰りの渋滞が容易に想像できたし、お風呂に入って生ビールを飲みたかったので、小梨平にもう一泊する事にした。

テン場で干し物をしてから、キャンプ場のお風呂に入って、お着替えをして生ビール。マイカーで山に行く者にとっては、滅多にない至福の時だ。

<コースタイム>

 トイレ脇(4:30)-(8:23)六百山―(10:16)ジャンクションピーク―(11:04)霞沢岳-(11:46)下降開始―(14:14)バスターミナル 

 

5月5日 晴れ

朝7時過ぎにキャンプ場を出て、バスで沢渡に戻り、温泉に入って、山菜天ザルを食べて、さかたのおやきを買うのに並んで。お昼前なのに中央道の渋滞に会ってしまった。

 

 

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