南アルプス   離山

 

 

  2006.12.29(金)〜31(日)

 

  岩間・望月(啓)・望月(仁)・田中  みー(記)

 

 

離 山 遠 景

 

  昨年、大藪鉱泉の裏から尾根に入り、離山から鳳凰三山の地蔵岳まで縦走しようとしたが、

 例年にない積雪と風化した花崗岩のヤセ尾根に悩まされ、2日目からほとんど先に進めず、

 せめて離山までと思ったが、ロープを1本しかなく、離山にも行けずに敗退。

  今年は、2度目の敗退は絶対に避けたかった。

 コースも大藪鉱泉裏の尾根より優しい一ノ沢の尾根から入る事にし、

 50mロープ2本と25mの補助ロープ1本、トップ用にバイルを余分に持って行く。

 

 

 12月29日(金) 晴れ

  朝起きると甲府北部の山も薄っすらと白くなっていた。今年は雪不足で水の心配をしていたが、何とかなりそうだ。

 韮崎に集合し、大武川林道に入る。ゲートがある桑木沢の所に車を止め、ここから林道を歩く。

 先週、林道工事の状況と取付の偵察に来たが、鉄砲打ちが沢山いたので、熊避けの鈴をつけて行く。

 新しい林道は、大武川の左岸に付けられている。人面橋のすぐ上に堰堤が造られ、こちらの林道はもう使えない。

 新しい林道をしばらく歩き、右岸に渡る道(たぶん工事用)を渡ると一の沢橋の少し上に出る。

 この道がなくなると上流の橋まで回らないと行けなくなるだろう。

  

  先週、偵察しておいた取付から登りだすが、今年一番の寒気で地面が凍っていて急坂は登りずらい。

 「一段登って尾根筋に出れば、しばらく道は明瞭」と山梨アルパインの十班の記録にあったが、道は明瞭ではない。

 2年位前に笹が一斉に枯れて、踏み跡がわかりにくくなったのではないか?と望月(啓)が言っていた。

 1393mピークまでの間は、急坂が所々あるが、登るには問題はない。

  この先で急坂になるようだし、雪はないが地面が凍っているので望月2名と私はアイゼンを付ける。

 尾根は右に曲がり、この先は2万5千の地図の感じとは違って尾根は細くなる。

 細い尾根が終わり、急坂を登るとヤセ尾根になる。

 地面には溶けた雪が氷になっていて荷も重いので、お助けロープでフィックスを張る。ここで全員アイゼンをつける。

 離山独特の風化した花崗岩のヤセ尾根だ。

  再度、急坂になり1650mあたりの尾根が合流する所で、帰りに尾根を間違えて降りないように、赤布をつける。

 急坂はさらに続き、正面の現れた大岩を左から巻き、稜線に出て左に曲がる。

 ここから50分ほど登った所に、テントが張れそうなスペースがあった。

 もう少し上にいいテン場がありそうか偵察にいくが、無さそうなのでここで泊まる事にした。

 傾斜はあるが4・5人用テントがぴったりだ。ただし雪は少なく、水を作るとゴミだらけだった。

 

 (コースタイム)

  桑木沢駐車場(0:30)尾根取付(2:20)1393mピーク(2:20)稜線(0:50)1850mあたりのテン場 

 

 

凍った急登りが続く

離山によくあるヤセ尾根。写真の左をまわり込んで通過する

 

 

 12月30日(土) 晴れ

  昨夜までの強風は収まるが、今日も寒い。必要な装備を整え、頂上に向かう。

 今日は、昨日より雪はあるが、雪が少ない所があるので、下山を考えて要所に赤布を付けて行く。

 30分ほど登ると、右が崩壊地になっている所に出る。

 尾根沿いに行こうとするが藪がきつく、少し降りてトラバースをする。

 傾斜の緩い左の方から、ジャンクションピークに向かう。傾斜が緩くなるとジャンクションピーク。

  ジャンクションピークから少し行くと急に山容が変わり、悪い箇所が出てくるようになる。

 まず、2m少しある一枚岩の垂壁はシュリンゲを使って下りる。帰りの登り返しのためにシュリンゲを残しておく。

 その先で、岩稜を右にお助けロープでフィックスを張ってトラバースがする。帰りのためにフィックスはそのままにする。

 そのすぐ下は、50mロープで懸垂をしてヤセ尾根まで下りる。これも帰りの登り返しのために残しておく。

  ここから離山への登りになる。少し右に廻ってから登っていくと、冬でもロープなしで登れる。

 順調に登って行くと、正面に岩峰が出てきた。右から巻いて行けなかったので、少し悪いが正面の少し窪んだ所から登る。

 身長位の岩があるが、バイルが決まらず登れない。バイルを踏み台にして下から一人を押し上げ、上から人を引き上げる。

  間もなく頂上になる。甲斐駒や地蔵岳・早川尾根の眺めがいい。

 ここから、冬にピークを3つ越えて地蔵岳まで行こうとしたら、足を揃えてツエルト泊まりで軽量化しないと厳しいだろう。

 フリークライミングをメインでやっている人の中には、「自分よりフリーが下手な人は、自分が行く山より簡単な山に行っている」

 と思っているクライマーもいるが、山にはクライミング以外の要素も多いのでフリー = 山ではないと

 こうして冬山に来ているとつくづく思う。

 

  帰りも時間が掛かりそうなので下り始める。

 登りでつけたトレースを拾いながら下る。途中で2回懸垂をして50mロープを残しておいた所まで戻る。

 ここは、先頭がプルージックで確保しながら登り、後続は上からビレーしてもらい登る。

 2m少しある一枚岩の垂壁はシュリンゲでアブミを作って登る。ここで核心は終了。

  ここからテン場までの下りは、雪が少ない箇所が所々あり、トレースを拾えずわかりにくい。

 赤布を数本しか持って来なかったので、節約して赤布を付けた。

 地図にはないが尾根っぽい所があり、少し下ると斜面になってしまった事があった。

 ガスや雪でトレースが消えてしまう場合を考えれば、もっと目印を持ってくるべきだった。

 ジャンクションピークからは懸垂なしてテン場まで戻って来られた。

 ロープを何度か使ったので時間はだいぶ掛かった。テン場は雪が溶け始め、昨日より傾斜を増していた。

 

 (コースタイム)

  テン場(0:30)崩壊地(1:40)ジャンクションピーク(2:00)離山(2:20)ジャンクションピーク(1:40)テン場 

 

 

頂上で記念撮影

 

 眺めは良かったが逆光で後ろの景色が写らなくて残念。

 カメラを落としてから(岩間の足で止まりラッキー)、

 写真を撮る気力を失い、あまり写真が撮れませんでした。

行きに懸垂した岩稜を登り返す

 

 12月31日(日) 晴れ

  今日も晴れ。冬型は緩み暖かい。一昨日あった雪も少し減っている。

 雪の少ない凍った斜面を、尾根を間違えないように気をつけながら、登りで付けた赤布を回収しながら下っていく。

 登りでフィックスした1393mピークの少し上のヤセ尾根は、下りもフィックスする。

  この下は登りでは問題なく登って来られたが、下りは良くない。

 風化した花崗岩の地面が凍っていて尾根が細くなっている急坂で懸垂をする。

 その後は、男性3人はそのまま降りるが、仁美さんと私は2回懸垂して取付きに下る。

  帰りの林道から、昨日登った尾根や離山をゆっくり眺めながら駐車場まで戻る。

 3日間、他のパーティーには全く会わなかった。2300m位の標高であまり知られていない山だけど面白かった。

 山梨県内にまだまだ面白い山があるに違いない。

 

 (コースタイム)

  テン場(2:50)1393mピーク(1:45)取付(0:40)桑木沢駐車場

 

 

北面なのに雪不足のテン場。1850m

 

やっと集めた雪で作った水は、ゴミだらけ

 

 大藪鉱泉(¥500)に入って、それぞれの自宅に帰る。良いお年を

  

 

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