またまたラッセル付で

八ヶ岳 広河原沢ベース

 

 (アイスクライミング)

 

          

12/28(月) 武藤返しの滝沢

12/29(火) 三ルンゼ

12/30(水) クリスマスルンゼ

 

岩間  みー(記)

 

        

 

 

 

 12月28日(月)雪 時々 曇り

11月の終わりにクライミングで股関節を痛めてしまったので、荷物を背負って縦走するのは一抹の不安があり、

休みがあわずメンバーも集まらなかったので、広河原ベースでアイスクライミングに行く事にした。

 

朝起きると甲府盆地では、天気予報通り、雨は上がり青空が広がっていたが、八ヶ岳が近づくと雪となった。

準備をしていると、次第に雪は小降りになり、出発の9時半頃には雪は止んだ。

快適なテント生活を送ろうと、大きめのテントを持ち、食料も肉やらホタテ・生卵まで持っているので足取りが重い。

1時半掛けて広河原沢出合まで来ると、テントが2張あった。

ここでテントを張って毎日通うのは大変だし、少し上流に行くと水も簡単に取れるらしいので、もう少し上まで上がる事にした。

上に行けば行くほど、川から水が取れる所があるが、川幅が狭くなってテントを張る事ができなくなってしまう。

広河原沢出合と本谷との出合の中間位の所の風が当たらない所にテントを張った。

 

泊まりの準備を整えて、「武藤返しの滝沢」に向かう。

本谷との出合を右に入って、ドボンしないように気を付けながら歩いていくと、正面にブルーの滝が出てきた。

この奥がクリスマスルンゼ。その手前の右支流の「武藤返しの滝沢」に入る。

ナメ滝を越えると垂直の滝が出てきたので、そこで岩間にトープロープを張って遊ぶ事にしたが、

だんだん雪も風も強くなり、スノーシャワーが降ってくるようになった。

トップロープで2回やって、「今日は足慣らしなので、もう帰ろう」としたら、どこかに刺しておいた岩間のバイルが1本ない。

私がトップロープで登って、ロープを回収する10分か15分の僅かな間に、雪に埋もれてしまったのだ。

簡単に見つかると思ったのだが、なかなか見つからない。上下左右に雪を掘り起こすのだが、神隠しにあったように見つからない。

このままでは、バイルを紛失して敗退となってしまう!

更に雪を掘り起こし、やっとバイルを掘り当てたのだが、滝を登っていた時間より、雪を掘り起こしていた時間が長かった気がする。

雪が降っている時は、不本意にバイルを置いてはいけないね。

良かった良かったとテン場に戻っていくと、本谷出合の少し下に、左岸から降りてきた踏跡があった。

この風雪の中、大変だったろうに・・・明日は、このトレースを使わせてもらう事になるだろう。

帰り道で水を汲んでテントに戻り、海鮮鍋を食べて寝た。

 

 12月29日(火)快晴

昨夜の残り鍋にお餅を入れてお雑煮を食べて、身支度を整えて出発。

トレースの上に積もった雪の上に、一人の足跡がついている。その足跡は私達と同じ本谷に向かっている。

暫く歩いていくと単独君が身支度を整えていた。

 水の流れる河原沿いについたトレースを辿り、2つ3つのナメ小滝を越えていくと、

やがてゴルジュに架かる滝が現れ、左岸には幅広の大きいナメ滝が続いていた。

少し氷が薄いゴルジュに架かる滝を越えると、ルンゼは急に狭くなっており、しかもトレースが全く消えてしまっていた。

ルンゼに溜まった雪はサラサラで、しかも気を付けないと、下には水が流れている。

ラッセルはだんだん深くなり、時折、蟻地獄のようなサラサラの雪の胸までラッセルになってしまう。

3人でラッセルを交代しながら進んでいくが、なかなか3ルンゼの出合に着かない。

今回のアイスもまたラッセルか〜。滝が現れるとラッセルしなくていいのでほっとする。

 やっと正面に氷柱の滝が現れ、三ルンゼの出合だ。

ここからも勿論ラッセル。ふくらはぎがパンパンになって30m滝下に着く。

段々になっている30m滝を越えると、左に垂直の滝、右にナメ滝が出てくる。

 単独君は左の垂直の滝を登るという。単独なので荷揚げもあるし時間が掛かるので、私達は右のナメ滝を登る事にした。

右の滝はナメであるが傾斜がある。何よりも高度感抜群で、ここで落ちたら三ルンゼの出合まで転がっていきそう。

ロープを出して岩間が登るが、氷は薄くてスクリューが決まるところは少ないようだ。スクリュー2本で上に抜けた。

標高が上がってきたせいか、オーバーグローブを外してビレーしていたら一気に指先が冷えた。

垂直の滝に取り付いていた単独君であったが、結氷状態があまり良くないようでクライムダウンして、右の滝に移動していた。

このナメ滝を越えると、またラッセルの始まりだ。

ルンゼ状のところは蟻地獄ラッセルなので、左の小尾根に上がる。こちらは、深くても股下のラッセルであった。

小尾根の上から左下を見ると、南稜のP3の取付きまで延々と深い雪に埋もれたルンゼが続いていた。

左の垂直の滝を登ったら、その蟻地獄ラッセルを強いられていただろう。右の滝を登って良かったと思った。

 傾斜が緩くなった潅木帯で一休みして振り返ると、今日は北アルプスの山までが綺麗に見えていた。

やがて小尾根の雪は風で飛ばされてハイ松が現れ、ナイフリッジを横切って右の主尾根と合流する。

そのまま尾根を歩いていくと、南稜のP3手前のプレートがある所で合流した。

 バッチリとトレースがついた南稜を下っていくと、P2とP3の間に2パーティーがテントを張る準備をしていた。

明日の午後から天気が下り坂なので、今日は上れる所まで来たと言っていた。

樹林帯に入り、やがて青ナギ。青ナギのほぼ中間点にピンクテープがあり、そこから下降しているトレースに入る。

太ももくらいまで潜ってしまうが、トレースがないより比べ物にならないくらい助かる。

トレースは、雪崩そうな斜面の上部を横切って、樹林帯に逃げていき、その後も蛇行したり、藪に入ったりと、

昨日の悪天の中、地図を確認しながら下りたのだろう。苦労の跡が伺えるトレースで、本谷出合の少し下流に出た。

 今日も途中で水を汲んでテントに戻り、凍った卵を溶かして、すき焼きを食べて寝た。

解凍した卵は生卵と何も変わらないんだと思った。

 

<コースタイム>

  テン場(8:15)−三ルンゼ出合(10:36)−南稜稜線(13:04)―テン場(15:08)

 

12月30(日)晴れ のち 曇り

 今日はのんびり起きて、スパゲティーを食べる。

昨日の三ルンゼで満足したけれど、折角ここまで来たのだからとクリスマスルンゼに行く事にした。

身支度を整えて出発するが足取りは重い。男性2人が軽快に私達を追い越していった。どうぞ先に行って下さい。

 正面に現れるブルーの小滝を越えて振り返ると、北アルプスの山並みが見えていた。

更に歩いていくと、ようやく左岸にクリスマスルンゼの大滝が見えた。

結氷状態が余り良くなく、真ん中の凹角になっている処だけが繋がっていて、両脇は繋がっていなかった。

下段のナメを登り、左岸の潅木でセルフをとって準備をする。

岩間がフリーで登り、私がフォローでいくが、出だしのナメでふくらはぎが「まだ登るの?」と言っていた。

だいぶ疲れているので、1回登っただけで帰る事にして、滝上の倒木からロープ2本で懸垂して下りた。

私達が下る頃には、朝には見えていた北アルプスが見えなくなっていた。天気は下り坂だ。

テントを回収し、来る時より軽くなった荷物を担いで、舟山十字路まで戻った。

「樅の湯」にゆっくり浸かって帰路に向かう頃には、八ヶ岳も雲がかかり、南アルプスも雪雲に覆われていた。

 

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