南アルプス:日向八丁尾根から甲斐駒

 

日向山〜大岩山〜(日向八丁尾根)〜烏帽子岳〜甲斐駒〜竹宇駒ケ岳神社

 

 

  200812.28 〜 31

 

 

岩間 細田     みー(記)

 

1日目:手前が日向八丁尾根、奥が鋸

2日目:2301m開けた小ピーク。

 

 12月28日(日)曇り 時々 晴れ

  朝6時に竹宇の尾白キャンプ場に集合。

 甲府盆地は晴れだが、尾白キャンプ場では強風で飛ばされてきた雪が舞っていた。

 車を1台ここに置いて、もう1台で日向山の登山口に向かう。

 林道には心配していた雪は全くなく、ゲートのある矢立岩登山口に車を停めて出発。

  先週、奥秩父にミズガキ山にアイスクライミングにいったら予想を遥かに越える雪に驚いたのだが、

 こちらは日向山頂上まで雪は全くなく、まるで秋の山のようであった。

 10月の月例山行で担ぎあげた日向山の標柱は、並木さんの報告通り抜き取られて穴は埋められていた。

 スコップなしで掘る事は難しいので、わざわざスコップを持ってきたのか?なんとも不思議だ。

  三角点を過ぎて展望の良い白い砂地に出ると、強風で砂が舞い上がって顔を叩きつける。

 砂が目に入って歩けないのでゴーグルをして砂地を通り過ぎてヤセ尾根に入る。

 ヤセ尾根は、離山の尾根と似ている風化した花崗岩の尾根だ。

 ヤセ尾根が終わり、駒岩への登りとなったところで、溶けた雪が氷になっているのでアイゼンをつける。

 鞍掛山との分岐になる駒岩、標高が2000mを越えているのに、雪はわずかで水を作れるのか心配になった。

 日帰りで鞍掛山に来た登山者の足跡はここでなくなり、これより先は私達だけの静かな山となる。

  樹木も切れ間から日向八丁尾根、その向こうには鋸岳の尾根が見えた。

 小さなアップダウンを過ぎて大岩山手前で大きく下る。

 大岩山への登りにさしかかると雪はアレヨという間に増えてきて、水の心配は全くなくなった。

 大岩山までは踏跡もしっかりあり、赤テープや赤ペンキも所々あった。

  大岩山に到着し、岩間と細田さんが大岩山を越えて大ギャップの先まで今日中に行けるか偵察に行った。

 なぜか山頂だけ風が全くあたらず平らなビバーク適地だったので、すぐにテントが張れるように整地をしながら待った。

 今日中には大ギャップを越えられそうにないとの事で、今日は少し早いが山頂で泊まる事にした。

 朝まで強風が吹き荒れたが、テン場だけは静かな夜だった。

 

 <コースタイム>

  日向山登山口(7:05)−日向山(8:55)−鞍掛山分岐・駒岩(11:29)−大岩山(14:55)

 

 

 12月29日(月)晴れ

  今日は風が弱く穏やかな日だ。

 朝からアイゼンをつけて日向八丁尾根に入る。日向八丁尾根とは大岩山と烏帽子岳の間の尾根を云うそうだ。

  ここからは尾根は南に方向を変え、しばらくなだらかな尾根を下る。

 だんだん急になってきて、クライムダウンしないと下れなくなり、やがてロープなしで降りられなくなる。

 荷物が重いのでハーネスを持っていくのをやめようかと話していた男性2人も、

 アイゼンを履いて重い荷物を背負っているのでハーネスを持ってきてよかったと言っていた。

  荷物を置いて偵察をしながら25mロープを2本つないで懸垂で下るが、どこが最低鞍部なのか?よく見通せない。

懸垂4回でようやくコルがはっきりし、最後は残置されたロープを使ってやっとコルに出た。

尾根というより壁という感じで、大ギャップを下るのに約2時間かかってしまった。

大岩山から先でテン場になりそうなところは、大ギャップ下から20分くらい先の小ピークまでなかったので、

昨日は大岩山で泊まってよかったと思った。

 日向八丁尾根に入っても雪も少なく藪も薄いので、6合石室まで行けるかもと思ったが甘くなかった。

雪はだんだん深くなり、おまけに表面5cmがクラストしていて、踏込むと膝までズボッと落ちるので疲れる。

雪の深さと比例するように藪も濃くなってきてワカンはつけられない。この薮が雪で隠れたら、快適な尾根になるだろう。

2301m小ピークは開けていて、鋸岳の第2高点に2人組みがいるのが見えた。小さいテントなら張れそうなポイントだ。

ここからもラッセルが続き、烏帽子岳の取付となる。

 烏帽子岳を登ろうか迷う。

この山は、甲斐駒側から見ると平らだが、日向八丁尾根から見ると名前の通り「烏帽子」のように尖っている。

地図で見ても、尾根筋は岩峰で傾斜もきつく、どこでテントが張れるかわからない。

今日も短い行動時間だが、烏帽子登り手前のコルの東側斜面に平らな所を見つけて泊まる。

今日も風を避けて、静かな夜を過ごす。

 

 <コースタイム>

  大岩山(7:07)−大ギャップ下(9:01)−(12:45)烏帽子岳取付

 

 

 12月30日(火)晴れ

 

  今日も天気は良く、年末とは思えないくらい気温が高い

 今日は朝からラッセル。昨日と同様に表面がクラストしている。

 烏帽子岳への急傾斜を登っていくと、やがて尾根は地図の通り岩峰になってしまった。

 岩峰は登れないので、仕方なく岩峰の基部に沿って右に右に下りながらトラバースして行く。

 折角登ったのに、ずいぶん下ってしまった。

 岩壁が切れる辺りから、潅木をつかんだり、草付きにピッケルを刺しながら力ずくで登るが、

 足元が岩で、アイゼンがしっかりきまらないので少し怖かった。

  傾斜は少しずつ緩やかになり、少し平らな所で一休みする。

 なぜかここに赤テープが2つあったが、雪のない時はどこから登ってきているのだろうか?と思った。

 一旦緩くなった傾斜は更にきつくなり、胸までラッセルになった。

 表面のクラストをした雪を膝で割ってから足元を固めて薮をぬって登るので遅々として進まない。

 シャクナゲの中のラッセル、そういえば大唐松尾根でも笹山尾根でもやったな〜。あ〜やっぱり南アルプスだ。 

  烏帽子岳が近くなり、やっと薮が薄くなり傾斜が緩くなってアイゼンの上にワカンをつける。

 烏帽子岳手前まで岩間が空身でトレースをつけに行く。

 ここまでくると少々斜面で吹きさらしではあるがテントが張れるだろう。

 空身のトレースの後を荷物を背負って歩くと沈んでしまうのは当然なのだが、やっぱりア〜を思ってしまう。

 烏帽子岳まで2時間くらいで行けると思っていたのだが、約3時間かかってしまった。

 山頂には小さい石碑があった。

  次の小ピークまでは、岩稜で雪が飛ばされていたのでワカンを外しアイゼンで歩く。

その先でまた樹林帯となりワカンをつけて歩く。

鋸岳に続く稜線は少し薮が切り開かれていて、雪も少なくなったので少し楽になった。

 やっと鋸〜甲斐駒の縦走路に出ると2人組みのトレースがあった。昨日、第2高点にいた2人組だろう。

2人が歩いただけでも有難い。しかも薮もない。この稜線の雪は非常に少なくアイゼンで歩く。

トレースがあって楽チンなはずなのだが、烏帽子の登りの疲れがだんだん出てきてしまった。

甲斐駒を越えて七丈小屋まで行きたかったが、六合石室で泊まり、明日いっきに甲斐駒を越えて下る事にした。

 六合石室は立て替えたばかりで非常に綺麗であった。小窓もあって陽射しが入るので明るい。

ただ、この年末は雪が少なかったので入口のドアが開いたと思う。

翌朝は、入口の隙間から石室内に吹き込んだ雪が小屋の内側からドアを塞いでしまっていたので、

スコップで雪をどけないとドアを開けられなかった。

3時頃に鋸岳から縦走してきた3人組みがやってきたが、日向八丁尾根を知らなかった。

「風雪のビバーク」にも載っている尾根で、地元では比較的メジャーな尾根だが、あまり馴染みがないようだ。

 

 <コースタイム>

  烏帽子岳取付(7:10)−烏帽子岳(10:15)−(11:27)縦走路−(13:05)六合石室

 

 

 12月31日(水)ガス 後 晴れ

  今日は寒い。今回始めてテントの中の結露が凍っていた。朝から風も強くガスの中だ。

 昨夜は石室の中にいて気が付かなかったが雪が降ったようだ。トレースの上に雪が積もっていた。

 昨日まで穏やかだった気候も冬山らしい天気だ。

 風にあおられて踏ん張ってばかりで疲れる。踏ん張りの弱い女には辛い風だ。ピストンだったらテント番したいのだが。

 ガスと強風の中、小ピークを越えても越えても次から次へと小ピークが現れうんざりする。

  3時間近くかかって祠がある頂上についた。

 その頃にはガスが晴れて素晴らしい展望だが、ゆっくり休む気になれず、すぐ黒戸尾根を下り始めた。

 黒戸尾根は年末にいったいどれだけの人が入ったのか?何かのレーンのように踏み固められていた。

 黒戸尾根に入ると、風は徐々におさまり日も当たって暖かい。

 気が付くと右の頬が軽い凍傷で白熊の形に色が変わっていた。

 七丈小屋を過ぎると梯子が続いて面倒くさい。年明けを山で迎えようとする人達がたくさん登ってくる。

早く大岩山より低くならないか、次は日向山より低くならないか。そんな事ばかり考えて長い黒戸尾根を下った。

黒戸尾根は日向山と違って、ずいぶん下まで雪があって驚いた。

丁度いい間隔にビバーク適地がなく、最終日に長時間歩く事になってしまったが、

暗くなる前に尾白キャンプ場に到着でき、日向山登山口に車を回収にいった。

年末で公共の湯はお休みなので家の近くの「名取温泉」に入って帰った。

 

「遠回りしてU字を描いて甲斐駒に行った」そのとおりかもしれない。

久しぶりに荷物を背負って縦走できたので、疲れたけどなかなか満足のいく山行だった。

 

<コースタイム>

  六合石室(6:45)−甲斐駒(9:37)−七丈小屋(11:06)−(16:41)尾白キャンプ場

 

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