湯檜曽川 ゼニイレ沢

 

 (沢登り)

 

          

10月11(日)

 

岩間  みー(記)

 

        天気  雨

 

 

 

 今年最後の沢の予定は、台風一過の快晴の中、紅葉を眺めながら快適にスラブを登り、ゆっくり温泉に泊まる計画で、

土曜日の夜8時過ぎに山梨を出発し、圏央道経由で水上に向かう。

水上ICを出ると、パラパラと雨が降っていた。

セブンイレブンで夜食のおでんを買おうとお店に入ったら、原村のクライマー夫婦がいた。

明日は谷川岳に行くそうで「今日の谷川が雪マークだけど、明日は寒気も去って天気になるだろう」と期待して別れた。

私達は白毛門登山口で車の中で仮眠をとる。

強い風と雨の音で6時前に起きると、満車に近いほどの車が停まっていた。

登山者達はカッパを着て次々と出発していくが、とても沢を登る状況ではないので、しばらく様子を見る事にした。

 

7時を過ぎると風は止み、やがて雨も止んで青空が出て日が差してきた。天気予報も回復の方向との事で出発する事にした。

8時10分と少し遅い出発となったが、台風一過の晴天の沢登りになるだろうと喜んで出発した。

土合橋を渡ってすぐの一ノ倉遊歩道を湯檜曽川に沿って歩いていく。

一ノ倉沢出合の対面の沢がゼニイレ沢で、沢の入口にはガレがうず高く積もっており、 

上部にはナメだかスラブが続き、岩肌には白く水が流れているのが見えた。

ここで身支度を整え、笹にごりの湯檜曽川本流を渡ってゼニイレ沢に入る。

地図を車の中に忘れてきてしまったが、トポがあるから大丈夫だろうと安易にガレを登っていく。

ガレた沢には、両手を広げたくらいの幅で水が流れており、やっぱり水量は多いのだろう。

 長いガレを登っていき二俣を過ぎると、突然ガレがなくなりナメ一色になる。

ぬめりのない花崗岩のナメは、アクアステルスの靴底は張り付くようなフリクションで快適であったが、

一つ目のナメを登りだすと、間もなく小雨が降り出した。

雨はだんだん強くなってきたが、潅木で懸垂できそうなので、行ける所まで行く事にした。

寒気の雲は新潟方面から次から次へとやってくるが、雲が切れると空が一瞬明るくなる。

ゼニイレ沢は、まるで一本のナメ大滝のように、途切れる事なく続いている。

左に広いスラブが伸びている2つ目のナメが現れ、1つ目と同様に高度感がある。

ナメを右に行ったり左にいったりしながら、登りやすいラインを選びながら登っていく。

今日のアクアステルスは雨に濡れていても快調だ。一年分のヌメリを取り戻すくらいのフリクションの良さであった。

2つ目のナメが終わり、最初に出てくる6m滝は、左から巻き気味に登り、2つ目の6m滝は少し手前から右岸を巻く。

3つ目の滝は右から巻くが、滝上のナメは傾斜が強いので、ネマガリと潅木の藪を登っていく。

濡れたネマガリの巻きは、手は冷たく滑りやすくて疲れる。

傾斜が緩くなったところで沢に戻ると、沢の幅も狭くて傾斜もなくなり、高度感がなくなり一安心したのだが・・・

 

 私が持っていた岳人のトポでは、二俣を左に入るとあったが、三俣が現れた。

左は僅かに窪んだ草付に水が流れ、真ん中のスラブが一番水量が多い、右が真ん中より少し水量が少ない。

後でわかった事だが、台風後も雨が止まず、スラブや草付にも水が流れ、平水時とは違う流れになっていたようだ。

右俣を登った方が登山道に簡単に出られそうなので右俣に入る。その先に右から水量のある支流が入るが真っ直ぐ行く。

やがて壁が立ちふさがり奥壁らしいが、濃い霧のため上の状況がわからない。

岩の一番の弱点である右上するバンド沿いに登り、右にトラバースして、更にその先の岩壁の基部を右に進んでいくと、

残置があってもおかしくない悪いトラバースがあり、ルンゼ状の所に出る。

そこから上に抜けようとした時に、一瞬ガスがとれた。スラブ混じりの潅木のない草付が続いているのが見えた。

バイルもハーケンも装備はあるが、傾斜のある濡れたドロドロの草付は滑りやすいので、ここを登るのは諦める。

トラバースは引き返せず、ネマガリを掴んで枝沢まで下りて、枝沢を少し下り、藪を乗越して三俣まで戻った。

地図を持たずに登ってきてしまった事を後悔。最悪は懸垂で下降して戻る事にして、

トポでいう左俣でないかと思った水量が一番多い真ん中のスラブを登ってみると、

すぐに広いガレになって水は消えてしまい、コルのようになってしまった。水量が多いために水流があっただけであった。

水量が多くて平水時を流れが違う事が明らかになったので、最初に登った通り三俣を右に入り、奥壁に向かう。

今度はトポを読み返し、残置や踏み跡がないか入念に見渡すと、正面左の草付に踏跡らしきものがあった。

一苦労して草付から岩に這いずりあがった上の小滝に残置ピトンがあり、小滝はしばらく続いた。

どこから右にトラバースしたらいいかよくわからず、フリーを楽しみながら上に抜けた記録を覚えていたので、

滑りやすい草付を登るより安全だろうと直上していくが、水が流れているので手が冷たい。

4級くらいの下部が被ったところがあったが、それ以外は問題ない。

岩稜が終わり、草付と岩が混ざった傾斜の強くない斜面を登っていくと藪になり、登山道に向けて藪を漕いでいく。

藪を掴む手も冷たく力が入らず、滑る足元を踏ん張って、右寄りに藪を漕いでいく。

雨が止んでガスも薄くなり、小ピークに向かって更に藪を漕いでいくと、人の声がする登山道であった。

風も冷たいので少し休んだだけで、土合に向かって登山道を下りるが、これも大変。

沢靴は滑りやすく、ジュルジュルになった登山道を何度も滑りながら、服もザックも泥だらけになって登山道を下った。

やっぱり、この登山道は好きになれない。

 駐車場に戻って濡れた服を着替えて、源泉掛け流しの本日の宿「湯ノ小屋温泉」へ。

露天風呂に入りながらビールを飲んで、キノコ料理を食べて幸せ。

翌日はキノコを買って、水上の山岳資料館に寄って、怪し気なラフティングスクールを見て、渋滞前に帰路についた。

 

 台風一過の快適な遡行をするつもりが、雨の中の遡行となってしまいました。

ナメというより、一本の長い長いナメ滝を登っている感じで、なかなか迫力のあるナメ滝でした。

 

 <コースタイム>

白毛門登山口(8:10)−(8:50)ゼニイレ沢出合−二俣(9:29)−稜線(1:39)−(15:40)白毛門登山口

 

 

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